白い息が、朝の光に触れた途端、ふわりとほどけていく──。
その儚さを目にするたび、まるで“冬の北海道に迎え入れられた”ような感覚になる。
ダウンの襟に指先を沈めると、そこに宿るぬくもりは、
静かな灯火のように胸の奥へそっと広がっていく。
雪を踏む微かな音は、大地が眠りの中でゆっくりと呼吸をしているみたいだ。
けれど、この地の冬は甘くはない。
氷点下の風は、まるで透明な刃をまとって肌に触れ、
ほんの少しの油断さえ奪い取る。
気象庁が“日本の中でも特別に厳しい寒冷地”と表現するのは伊達ではなく、
札幌の真冬日、旭川の-15℃の朝──数字以上の冷たさが旅人を試してくる。
それでも僕は、この季節の北海道が好きだ。
この地を何度も歩き、吹雪に包まれた朝も、
雪明かりに照らされた夜の静寂も経験してきたからこそわかる。
正しい装備は、寒さを敵ではなく“景色を深く味わうための鍵”に変えてくれる。
旅の自由は、服装と持ち物の中に宿っている。
それが整った瞬間、北海道の冬は、鋭さより“優しさ”の方を多く見せてくれる。
僕はこれまで20か国を巡り、寒冷地の旅も数え切れないほど経験してきたけれど、
「冬の北海道ほど、装備の差が旅の幸福度を左右する土地はない」と断言できる。
実際、観光協会や防災気象機関も推奨する“適切なレイヤリング”が整っているだけで、
氷点下の街がまるで別世界のように歩きやすくなる。
このページでは僕が冬の北海道、
吹雪の朝や雪明かりの夜景を実際に体験してきた中で掴んだ、
「冬の旅を心地よくするための、確かな知識と感覚」を、
情緒の温度を添えながら静かに紡いでいきたい。
冬の北海道の気温と特徴|白い息の向こう側に広がる“本当の寒さ”
朝、外へ足を踏み出した瞬間、空気がまるで“刃先のように”肌へ触れる。
冬の北海道は、単なる気温では語れない。
数字では表現しきれない“体感という名の風景”が存在している。

札幌市観光公式サイトが示す12月〜2月の平均気温は-3〜-5℃前後。
特に1月は、最高気温が氷点下に届かない「真冬日」が当たり前のように訪れる。
(参考:札幌観光公式サイト)
ただ、僕はこの地で何度も冬を歩いてきて、ひとつ確信している。
「北海道の寒さは、温度計よりも風が語る」ということだ。
雪で覆われた空気は光を吸い込み、肌の表面温度を静かに奪っていく。
頬をかすめる一陣の風だけで、体感温度は数字の2〜3倍ほど低く感じられることもある。
気象庁のデータでも、北海道の冬には特有の環境がある。
・夜明け前、放射冷却で気温が急落する
・乾いたパウダースノーが体感温度をさらに下げる
・内陸は鋭い冷気、沿岸は湿った重い寒さと“寒さの質”が異なる
(参考:気象庁 北海道地方気象台)
旭川の早朝、-12℃の空気の中を歩いたときのことを今でも覚えている。
スマホを取り出した瞬間、電源が一気に落ち、
“機械ですら息を止める寒さ”を前に、思わず笑ってしまった。
けれど、その直後に見た景色は忘れられない。
薄桃色の朝日が雪面にそっと触れ、世界の輪郭がやわらかく浮かび上がる。
吐く息だけがゆっくり漂い、時間が止まったような静けさがあった。
冬の北海道は、厳しさと美しさが常に同じ場所に佇んでいる。
だからこそ、旅人には知ってほしい。
“冬の北海道は、装備を整えた者だけに優しい表情を見せてくれる”ということを。
次の章では、その鍵となる「レイヤリング」という技術を、経験に基づいてわかりやすく解説していく。
冬の北海道の服装|旅が自由になる“レイヤリング術”
冬の北海道を歩くとき、僕がいつも胸の奥で反芻する言葉がある。
「寒さは敵じゃない。装備さえ整えば、景色を深く味わわせてくれる味方になる」という感覚だ。
20代の頃から世界中の寒冷地を歩き、北欧や東欧の真冬も経験してきたけれど、
「外は氷点下、室内は春のような暖かさ」という極端な温度差は、北海道ならではのものだと断言できる。
一枚の厚いコートで戦おうとすると、外では凍え、建物に入ると汗だくになる。
その不自由をほどく鍵こそが、旅人の自由を守る“レイヤリング(重ね着)”という考え方だ。
言い換えれば、冬の北海道では「服は一枚の鎧」ではなく、
「温度に合わせて形を変えられる、可変式のシェルター」である必要がある。
外では冷気を遮断し、室内ではさっと脱いで身体を緩める。
そのリズムを作れるかどうかで、旅の疲れ方も、楽しめる景色の数も大きく変わってくる。

ベースレイヤー(下着)|体温を逃がさない“旅の土台”をつくる
いちばん内側、肌に直接触れるベースレイヤーは、家でいえば「基礎」にあたる部分だ。
ここが弱いと、どれだけ高価なアウターを着ても、じわじわと冷えが忍び込んでくる。
薄手でも保温力の高い発熱インナーは、冬の北海道ではほぼ“パスポート”のようなものだと僕は思っている。
僕はいつも、朝の出発前にインナーを手のひらで軽く温めてから身にまとう。
たった数秒の所作だけれど、あの布一枚が「今日もこの寒さと仲良くやっていこう」と
心に小さなスイッチを入れてくれる。
- ヒートテック系などの発熱インナー(厚さは活動量に合わせて調整)
- 汗をかきやすい人には、登山家も愛用するメリノウール素材がおすすめ
- 襟元が広く開いたタイプは、そこから冷気が入りやすいので冬旅では避ける
ポイント:汗冷えを防ぐ素材選びが重要。
冬の北海道では、雪景色を求めて少し夢中になって歩くだけで、思いのほか汗をかく。
その汗が冷えた瞬間、身体は内側から一気に冷えてしまう。
だからこそ、登山やトレッキングにも使われるような吸湿速乾性の高いインナーは、
「凍える旅」か「心地よく歩ける旅」かを分ける、目に見えない分かれ道になる。
ミドルレイヤー(中間着)|寒さを包み込む“ぬくもりの層”
ベースレイヤーの上に重ねるミドルレイヤーは、
言うなれば“身体のまわりに空気の毛布をつくる役目”を持っている。
フリースやニット、セーターといった中間着がここで活躍する。
風を通さず、身体の熱をふわっと閉じ込めてくれる存在だ。
夕方、小樽の運河沿いを歩いたときのことを今でも覚えている。
海から吹き上げる風が頬を刺すように冷たかったのに、
フリースの内側にたまった空気は驚くほど穏やかで、
「まるで服の中に小さな焚き火を持ち歩いているみたいだ」と本気で思った。
あのとき改めて実感したのは、“ミドルレイヤーは、数値ではなく体感を変える存在”だということ。
- 軽くて保温力の高いフリース
- 風を通しにくいローゲージニット
- 薄手ダウンを中間着として使う“二枚重ね”スタイルも有効
そして何より大事なのは、「脱ぎ着のしやすさ」。
冬の北海道のカフェや商業施設は、驚くほど暖房が効いている。
外では震えるほど寒いのに、ドアを一枚くぐるだけで春の室内にワープすることも多い。
そんなとき、ボタンひとつ、ジッパーひとつで体感温度をスッと調整できるミドルレイヤーは、
旅のリズムを崩さないための大事な味方になる。
アウター(上着)|冬の北海道を歩くための“個室”をまとう感覚
いちばん外側にくるアウターは、
冬の北海道を歩くときの“移動式の個室”だと僕は思っている。
ここが心もとないと、どれだけ中を着込んでも、
冷たい風がじわじわと身体の芯まで届いてしまう。
だからこそ、冬の北海道では防風 × 防水は絶対条件。
僕の結論としては、防風・防水性の高いダウンジャケットか、
寒冷地仕様の防寒コートのどちらかを選べばまず間違いない。
札幌観光公式サイトでも、冬の街歩きには
「防水性があり、風を通さないアウター」が推奨されている。
これは現地の人の実感ともぴたりと一致している。
(参考:札幌観光公式サイト)
- ダウンジャケット:軽くて暖かく、防風性に優れる万能選手
- ロングコート:腰や太ももまで覆うことで、体の熱を逃がしにくい
- フード付きアウター:吹雪の日や横殴りの雪から顔まわりを守ってくれる
僕が旭川で本格的な吹雪に包まれた日、
フードを深くかぶった瞬間、周囲の音がふっと遠ざかり、
白い世界と自分だけが切り取られたような、不思議な静寂が訪れた。
そのとき強く感じたのは、
「アウターはただの“服”ではなく、寒さから身を守る盾であり、
風景を味わうための“自分だけの居場所”でもある」
ということだった。
しっかりしたアウターに守られていると、吹雪さえも“旅の一場面”として楽しめるようになる。
女性向け・カップル旅向けのポイント|“おしゃれと防寒”を両立させる工夫
冬の北海道では、多くの場合、女性のほうが冷えを強く感じやすい。
「写真にはかわいく写りたい」「でも寒さはつらい」──このバランスに悩む声を、
取材でも何度も耳にしてきた。
- タイツ+裏起毛レギンスの“二重構造”で、見た目はすっきり・中はしっかり防寒
- マフラーやストールで首元を守ると、体感温度がぐっと変わる
- スカートを履く日は、強い風の吹く海辺や高台の観光は時間を短めに
カップル旅では、どちらか一人でも冷えに耐えられなくなった瞬間、
その日の行動範囲は一気に狭まってしまう。
「どちらか一人の冷えが、ふたりの旅の自由を奪う」というのは、
僕がこれまで何組もの旅人を見てきて感じた、ちょっとした“真理”だ。
だからこそ、出発前にふたりで服装の相談をしておくことは、
ロマンチックな計画づくりであると同時に、
「最後まで笑って旅を終えるための、いちばん実用的な準備」でもある。
レイヤリングが整ったとき、冬の北海道は驚くほど歩きやすくなる。
次の章では、そんな旅を支える“足元の装備”について、
僕の失敗談と公式情報の両方を交えながら、もう一歩踏み込んで案内していきたい。
雪道は“装備が命”──冬の北海道旅行で絶対に失敗しない靴・足元の準備
冬の北海道を歩くとき、僕がいちばん声を大にして伝えたいのはこれだ。
「足元の装備を制した者だけが、冬の北海道を思いきり楽しめる!」
本当にそれくらい重要。いや、正直に言えば──靴がちゃんとしていれば、
北海道の冬は驚くほど優しくなるし、逆にスニーカーなんて履いていった日には、
旅の序盤で“心が折れるレベル”の試練が待っている。

雪の街は静かで美しい。足を踏み出すたびに、白い世界がわずかに沈み、音を飲み込む。
でもその美しさは、まるで“試験官”のように旅人を見ている。
「あなた、その靴で本当に大丈夫?」と。
僕も北海道の冬を初めて歩いた日のことを、鮮明に覚えている。
まだ知識もなく、なぜか普通のスニーカーで挑んでしまった僕は、
ホテルを出てわずか30秒で、見事につるり。
空が逆さに見えたあの瞬間、人生で初めて“重力を恨む”という経験をした。
倒れながら思ったのはただひとつ。
「あぁ……装備、本当に大事だ……!」
その瞬間から、僕は足元の研究を徹底的に始めた。旅の自由は足元に宿ると知ったからだ。
スニーカーは基本NG|雪は「滑る」ではなく「転ばせにくる」存在
札幌観光公式サイトでも、冬の街歩きには滑りにくい靴が必須と明言されている。
これは“地元の知恵そのもの”だ。
(参考:札幌観光公式:冬の服装)
理由は簡単。冬の北海道には、スニーカーが絶対に勝てない“3つのトラップ”がある。
- アイスバーン──鏡のように光り、あなたの靴底を一刀両断してくる
- 圧雪路──踏み固められた雪の上で、意外と横滑りしやすい
- シャーベット状の雪──靴が濡れ、その冷たさが地獄のように足先にくる
スニーカーは底が硬く、グリップ力が弱い。
つまり雪の上では、あなたを守る力を持たない。
雪道は「優しそうな顔をした強敵」だ。
スノーブーツ or 防滑ブーツ|“旅の安心を丸ごと買える”装備
冬の北海道で後悔したくないなら、
「スノーブーツ」または「防滑ブーツ」を迷わず選ぼう。
これはもう、経験者として断言できる。
「心の余裕」と「旅の範囲」が、靴ひとつで本当に変わる。
特に重要なのはこの4条件だ。
- 深い溝がある靴底(グリップの差=運命の差)
- 防水性が高い(冷えは濡れた足から一気に来る)
- 甲部分が暖かい(足先は冷えの最前線)
- ミドルカット以上(足首からの冷気侵入を防ぐ)
旭川の-12℃の朝、僕は30分ほど街を歩いたことがある。
スノーブーツの底が雪をしっかり噛み、足裏に“頼もしさ”が伝わってくるあの感覚。
あのときの僕は、雪道の上でひとりテンションが上がっていた。
心の中で叫んでいた。
「うわ、めちゃくちゃ歩きやすい!! 装備ってすごい!!」
本気で旅のストレスがゼロに近づく。
それくらい、靴の選択は旅の質を変えてくる。
滑り止めスパイクは必要?|“安心を買う”という考え方
結論:街歩きだけなら必須ではないけれど、あると安心が段違い。
とくにこんなときに役立つ。
- 急な坂が多いエリア(小樽・函館の坂道は本当に手強い)
- 夜の散策(気温が下がり、凍結スピードが上がる)
- 大雪・吹雪の翌日(踏み固められた雪が最強の滑り床になる)
靴底にワンタッチで装着できるタイプもあり、
「初めての冬の北海道が不安」という人には非常に心強いアイテム。
備えあれば憂いなし、とはまさにこのことだ。
厚手ソックス・タイツなど“足の内側の装備”が旅の温度を決める
靴選び以上に見落とされがちなのが、
“足の内側の保温”だ。
外側だけ完璧でも、足先が冷えた瞬間、旅のテンションは一気に下がる。
雪道は容赦なく靴を冷やし、その冷えが直接体温を奪っていく。
- 厚手ソックス(メリノウールは“足の革命”レベル)
- タイツ+裏起毛レギンスの重ね履き
- 足先カイロ(極寒の朝には神アイテム)
小樽の夕暮れに、運河沿いを歩いたときのこと。
気温はかなり低かったけれど、足先がふんわり温かいだけで、
景色の美しさがまるで違って見えた。
人は温かければ、余裕を取り戻す。
余裕を取り戻せば、旅はもっとおもしろくなる。
足元が整えば、旅はもっと自由になる。
次の章では、心も身体も温めてくれる「持ち物リスト」を、
僕自身の経験と“旅の失敗談”も交えながら紹介していこう。
冬の北海道旅行の持ち物リスト|“心まで温めてくれる”必需品たち
冬の北海道を旅していると、ある瞬間から世界の見え方が変わる。
冷たい風に頬を撫でられたとき、ふと手袋を取り出す。
雪景色に心を奪われて歩き続けると、マフラーがそっと体温を守ってくれる。
その一つひとつの動作の中で、僕はいつも思う。
「あぁ、持ち物ってただの荷物じゃない。旅を一緒に歩く“相棒たち”なんだ」と。
20代の頃、まだ旅慣れていない僕は“荷物は軽いほうが偉い”と本気で思っていた。
ところが冬の北海道は、そんな浅い考えを秒速でひっくり返してくる。
寒さ・乾燥・雪・風──この土地で油断した瞬間、旅の楽しさは一瞬で奪われる。
でも逆にいえば、「正しい持ち物」さえ揃えれば、冬の北海道は魔法のように歩きやすくなる。
ここでは、僕自身が何度も冬の北海道を旅しながら
「これは本当に旅を変えてくれた」と実感したアイテムだけを厳選して紹介したい。
ワクワクしながらパッキングできるような、そんな“温度のあるリスト”をどうぞ。

① 防寒小物|小さなぬくもりが、旅をまるごと塗り替える
冬の北海道で僕が真っ先に守りたいのは、
首・手首・足首=“3つの首”だ。
この3ヶ所をやられると、一気に体温が逃げていく。
逆にここさえ押さえておけば、体感温度は劇的に変わる。
- 手袋(防水タイプは世界が変わる)
- マフラー or ネックウォーマー
- 耳まで隠れるニット帽
- 耳あて(風が強い日は神アイテム)
小樽で雪が横から叩きつけてきた日、
ニット帽を深くかぶった瞬間、
“世界の音がふっと消えた”ように感じたあの静寂。
あれは防寒ではなく、もはや“メンタルケア”だった。
防寒小物は、旅人を守る無口な盾。
だけど、その安心感はどんな絶景よりも深く心に残る。
② 乾燥・寒さ対策|北海道の冬は空気そのものが強敵になる
北海道の冬は、“乾燥と寒さのタッグ”が恐ろしく強い。
暖房で肌は乾き、外に出れば冷気が容赦なく指先を奪っていく。
だから、ケア用品は隠れたMVPだ。
- リップクリーム(忘れたら本気で後悔する)
- ハンドクリーム(風と乾燥で指が割れる前に)
- 保湿マスク(乾燥×寒さのダブルガード)
- 使い捨てカイロ(貼るタイプは背中に貼ると別世界)
釧路で日の出を撮影した早朝、
貼るカイロが背中からじんわり温度を伝えてくれた瞬間、
寒さよりも“旅の始まりのワクワク”が勝った。
あの感覚は今でも忘れられない。
暖かさって、心にまで届くんだ。
③ バッグ・収納系|雪道では“両手を空ける”ことが自由をつくる
冬の北海道では、両手がどれだけ自由かで旅の余裕が決まる。
滑りやすい道では、手すりに触れたり、バランスを取ったりするだけで安心感が違う。
バッグ選びはまさに“安全装備の一部”だ。
- 防水リュック(雪が舞う日もノーストレス)
- 斜めがけバッグ(身体に密着して動きやすい)
- ジッパー式ポケット(雪が入りにくくトラブル減)
写真を撮るときの機動力も、両手が空いているだけで別次元になる。
雪旅は動作が多い。
手袋を外す、レンズを拭く、スマホを取り出す──
そんな一つひとつの動作をストレスなくこなせるのが、冬旅の本当の快適さ。
④ 電子機器の防寒対策|スマホもカメラも、冬の敵は“寒さ”
冬の北海道では、スマホの電池が驚くほど早く消える。
最初は「え?壊れた?」と思うけれど、これは普通のこと。
寒さでリチウム電池が一時的に力を失うだけなのだ。
- モバイルバッテリーは絶対に持つべき
- スマホはアウターの内ポケットへ(体温が最高のバッテリー)
- カメラは結露対策にジップ袋が地味に大活躍
旭川の-10℃の朝、撮影中にスマホが突然シャットダウンし、
手のひらの中で“冷たい石”みたいになったとき、
僕は悟った。
「ガジェットも旅の仲間。守らなきゃダメだ」と。
その日から、僕は冬旅で電子機器の扱いが一段階上手くなった。
⑤ その他|“あるかないか”で旅の自由度が大きく変わるもの
- 保険証・常備薬(旅の安心の根っこ)
- ホッカイロ(特に靴用タイプは世界が変わる)
- 折りたたみ傘(雪よりも風の日に強い)
- タッチパネル対応手袋(写真好きには必須)
- 替えの靴下(濡れたらその日のテンション終了)
冬の北海道は厳しい。だけど、ちゃんと向き合えば驚くほど優しい。
持ち物はその“優しさ”を引き出す小さな魔法だ。
必要なものが揃った瞬間、旅は一段階おもしろくなる。
次の章では、冬の北海道で気をつけたいリアルな注意点を、
僕自身の経験とデータを交えて深く案内していこう。
冬の北海道で気をつけたいこと|吹雪の日に“旅人が守るべきルール”
冬の北海道は美しい。
けれど、その美しさの裏側には、旅人が知っておきたい
「静かな注意点」がいくつかある。
それを知っているかどうかで、旅の安心感は大きく変わる。
ここでは、僕自身が何度も経験し、そして地元の方々から教わった
“冬旅の心得”をまとめてみた。

① 吹雪・ホワイトアウトの日は“無理をしない”
僕が旭川で吹雪に出会った日のこと。
目の前の景色が、まるで白い紙に塗りつぶされたように消えていった。
風の音だけが世界を支配し、ほんの数メートル先さえ見えない。
北海道では、こんなホワイトアウトが珍しくない。
視界が奪われると、人は驚くほど簡単に方向感覚を失う。
そんなときに守るべきは、たったひとつのルール。
「無理に移動しないこと」。
予定を変える勇気は、冬の旅では“命を守る選択”でもある。
カフェで温まりながら天気が落ち着くのを待つ──それもまた旅の時間だ。
② 雪道での転倒は“油断の一秒”で起きる
冬の北海道に慣れた人ほど歩き方が上手い。
彼らが実践しているのは、この3つの基本。
- 歩幅は小さく、足の裏全体で着地する
- 急がない(焦りは転倒の最大の原因)
- 手をポケットに入れない(転んだときに危険)
特に小樽や函館の坂道は、夜になると凍結して滑りやすくなる。
写真を撮りたくてつい立ち止まりたくなるが、足元の状態を確認する癖をつけよう。
③ 予定は“ゆるく組む”のが正解|交通トラブルは冬の常
冬の北海道では、交通機関の遅延・運休は日常の一部だ。
新千歳空港では吹雪や滑走路凍結で欠航が出ることが多く、
JR北海道でも強風や視界不良で速度規制がかかる。
- 移動時間は1.5倍で見積もる
- 到着日や帰宅日の“強行スケジュール”は避ける
- 次善案(代替ルート)を用意しておく
予定をゆるく組むことは、旅の自由度を守る行為だ。
「急がない旅」は、北海道にこそ似合う。
④ 室内は驚くほど暖かい|“脱ぎ着できる服”が旅を救う
北海道の冬を歩いていると、
外の凍える空気と、室内のポカポカした暖かさの差に驚く。
暖房の効きが良すぎて、汗ばむほどの店もあるくらいだ。
だからこそ、脱ぎ着できるレイヤリングが旅の快適さを左右する。
アウターを脱いでミドルレイヤーだけになれる柔軟性は、
冬旅にとって“自由をくれる仕組み”だ。
⑤ 夜の移動は慎重に|気温が下がるほど路面は危険に
日が沈むと、雪道は一気に表情を変える。
昼は溶けていた雪が再凍結し、見た目には分からない
ブラックアイスバーンが現れる。
特に注意したいシーンはこの3つ。
- 飲食店やバーからの帰り道
- 観光地からホテルへ戻る道
- 夜景スポットからの下り坂
夜の冷たい空気を吸いながら歩く北海道は美しい。
けれど、その美しさに酔いすぎないように──
“帰り道の安全”までが旅の景色だ。
次の章では、12月・1月・2月の気温と服装の違いを
具体的に比較しながら、“迷わない旅支度”のヒントをまとめていく。
12月・1月・2月の服装比較|旅の朝に“迷わなくなる”冬の北海道スタイル
同じ“冬の北海道”でも、12月・1月・2月はまるで別の顔をしている。
旅に出る季節によって、求められる服装は微妙に変わる。
ここでは、毎月の気温と体感の違いをやさしく整理してみたい。
──服装は「何度の世界を歩くのか」で決まる。
それを知っているだけで、旅の朝の迷いがすっと消える。

12月|“冬の扉が開く”季節。積雪は増えるが寒さは序章
12月の北海道は、街全体がゆっくりと冬に染まり始める時期。
札幌では月の前半と後半で寒さがまったく違い、
初旬は0℃前後、中旬以降は一気に氷点下の世界に入っていく。
服装の目安:
- 発熱インナー+フリース
- 厚手のダウン or 防寒コート
- スノーブーツ(早めに準備)
- 薄手の手袋 → 後半は厚手に変更
12月は「旅人としての冬の感覚」を思い出す季節。
雪がしんしんと降り始める道で、白い息がふわりと浮かぶその瞬間、
冬旅のスイッチが静かに入る。
1月|“冬の頂点”。刺すような寒さと、最も美しい雪の表情
1月は北海道が最も静かで、最も凛とした季節。
昼でも氷点下が続き、夜は-10℃以下になるエリアも少なくない。
空気が引き締まり、雪が細かく光る朝は、まるで“白い呼吸だけが動いている”ようだ。
服装の目安:
- 発熱インナー(厚手)+フリース or ニット
- 防風・防水ダウンは必須
- スノーブーツ(凍結対策)
- 手袋・耳あて・ネックウォーマーなどのフル装備
- 足先カイロを使うと快適に歩ける
僕が真冬の旭川を歩いた朝、
空気を吸っただけで鼻の奥がきゅっと痛くなるような冷たさがあった。
けれど、その鋭い寒さは、景色の美しさをより深く刻み込んでくれる。
「冬の北海道を歩いている」と実感するのは、いつも1月だ。
2月|寒さのピークは続くが、旅は“イベントの季節”へ
2月は引き続き厳しい寒さが続くが、街には少しずつ活気が戻る。
札幌雪まつり、小樽雪あかりの路──白と光が混ざり合う幻想的なイベントが増え、
夜の街に出たくなる季節だ。
気温そのものは1月とほぼ同じ。
ただし、雪道の状態はより安定してくるため歩きやすい日も増えてくる。
服装の目安:
- 1月と同レベルの防寒が基本
- マフラー・耳あて必須(夜イベントは冷えやすい)
- 手袋は防水性もチェック
- 写真撮影が増える人はタッチパネル対応手袋を
2月、小樽運河の灯りが雪に反射する夜。
マフラーの隙間から入る冷たい空気さえ、不思議と心地よく感じた。
“防寒が整っていると、寒さは景色の一部になる”。
そのことを、僕は2月の旅で強く知った。
月別の違いをまとめると…
| 月 | 気温の傾向 | 服装のポイント |
|---|---|---|
| 12月 | 0〜-5℃ほど。後半から本格的な冬へ。 | 早めの防寒開始。ダウン+フリースで調整。 |
| 1月 | 最も寒い。昼も氷点下の日が多い。 | 防風・防水アウター必須。フル装備が前提。 |
| 2月 | 寒さのピークは継続。夜の冷え込みが強い。 | 1月同様。イベント時は耳あて・手袋が活躍。 |
月ごとの差は小さく見えるかもしれない。
けれど、旅人の体感はまったく違う。
その微細な“季節の表情”を知っておくことで、冬の北海道はより心地よい旅へと変わっていく。
次の章では、「シーン別の服装」を紹介する。
観光・夜景・カフェ巡り・スキー場など、旅の目的に合わせた装備をまとめていくよ。
シーン別|冬の北海道をもっと自由にする服装アドバイス
冬の北海道には、同じ一日でもいくつもの“表情”がある。
街歩きの午後は陽ざしがやさしく、夜景の時間帯は一気に冷え込み、
そしてスキー場では、雪が息をするように舞っている。
ここでは、旅のシーンごとに「ちょうどいい服装」を案内したい。
あなたが歩く予定の場所に合わせて、旅の温度を整えてみてほしい。

① 街歩き・カフェ巡り|“脱ぎ着しやすさ”こそ最高の旅支度
札幌、大通公園、函館のベイエリア──
冬の街歩きは、氷点下の空気とあたたかな室内を行き来する独特のリズムがある。
おすすめの服装:
- 発熱インナー+薄手のニット or フリース
- 防風・防水のダウンジャケット
- 滑りにくいスノーブーツ
- 手袋・マフラー(歩きながら着脱しやすいもの)
街角のカフェに入り、コーヒーの湯気に顔を近づける瞬間、
脱ぎやすいミドルレイヤーだと身体がすっと軽くなる。
「街は寒い、店内は暖かい」──冬の北海道はこの繰り返しだ。
だからこそ、調整のしやすい服装が旅を快適にする。
② 夜景スポット(小樽運河・函館山)|写真を撮る人は“手元の装備”が鍵
夜の北海道は、とにかく冷える。
特に小樽運河・函館山など写真が美しいスポットでは、
撮影のためにじっと止まる時間が長くなるため、体温がどんどん奪われていく。
おすすめの服装:
- 厚手の発熱インナー+フリース+ダウン
- 耳あて(夜風で冷えやすい)
- 防水手袋(タッチパネル対応が便利)
- 靴用カイロで“足先の冷え”を防ぐ
僕が小樽運河で撮影をしていたとき、
凍える空気の中でシャッターを切る指先が痛みはじめた。
そのとき、ポケットに忍ばせていた指先用カイロが
ゆっくりと熱を届けてくれて、撮影に戻る勇気が湧いてきた。
写真を撮る旅人にとって、手元の装備は命綱だ。
③ スキー場・アクティビティ|“防風×防水×保温”の三位一体が必要
ニセコ・ルスツ・富良野など、北海道のスキー場は世界でも有名なパウダースノー。
ただ、その分だけ気温は低く、風も強い。
街歩き用のダウンでは不十分なことが多い。
おすすめの服装:
- スキーウェア(防風・防水性能が高い)
- ゴーグル(雪の反射・吹雪対策)
- 防水グローブ
- ネックウォーマー(雪の侵入を防ぐ)
- 厚手のソックス+足用カイロ
麓の温度が-5℃でも、リフトに乗って標高が上がると一気に体感温度が変わる。
風がある日は、街の3倍寒い。
だから、スキー場に行く日は“別の服装”と考えたほうがいい。
④ 車移動が多い旅|防寒より“温度差対策”が重要
車旅行の場合、アウターを着込んでいると逆に暑すぎることがある。
車内は暖房で暖かいため、脱ぎ着しやすさが快適性のカギになる。
おすすめの服装:
- 軽めのインナー+フリース
- アウターは薄手のダウン or 防寒コート
- 靴は防滑タイプならOK(重すぎないもの)
- 背中のカイロは暑くなりすぎるので注意
⑤ 子連れ旅|“大人より寒さに弱い”を前提に準備する
子どもは大人より体温が下がるのが早く、手先・足先の冷えに敏感。
そのため、早め早めの防寒対策が必要だ。
おすすめの服装・持ち物:
- スキーウェアに近い防寒着(外遊びが多い場合)
- 二重手袋(内側は薄手、外側は防水)
- 靴下は替えを複数枚
- ベビーカー移動なら防寒カバーを必ず
子どもが「寒い」と言った瞬間に旅の雰囲気は一気に変わる。
だからこそ、“寒さを言わせない準備”が家族旅の鍵だ。
冷えを防げれば、子どもは雪景色の中でずっと笑っていられる。
次の章では、旅全体を包み込むような、静かな“まとめ”へと進んでいく。
白い息が溶けていく朝、その感覚を思い出しながら締めくくろう。
FAQ|冬の北海道旅行で友人によく聞かれる質問に答えるよ
Q1. 冬の北海道旅行にスニーカーで行っても大丈夫?
正直に言うと、やめたほうがいい。
僕も最初の冬旅でスニーカーを履き、ホテルを出て30秒で見事に転んだ経験がある。
アイスバーンは想像以上に手強くて、雪国の人たちがなぜ“靴選びにうるさい”のか一瞬で理解した。
旅を楽しみたいなら、スノーブーツか防滑ブーツ一択。
これだけで歩ける距離も疲れ方もぜんぜん変わるよ。
Q2. スノーブーツってレンタルできる? 買うべき?
札幌・小樽・旭川あたりならレンタルはあるよ。
ただ、サイズ欠けが多いし“歩きやすさ”は自分に合うかどうかがすごく大事なんだ。
僕の結論としては、「1回の冬旅で3日以上歩くなら買ったほうが安心」。
旅のストレスが減るし、翌年も使える。
短期間ならレンタルでもOKだけど、ユーザーの足癖に馴染んでいない靴は、意外と疲れやすいんだよね。
Q3. めちゃくちゃ寒がりなんだけど…どれくらい防寒すればいい?
寒がりさんは、3レイヤー(発熱インナー+フリース+防風ダウン)が鉄板。
これは僕が旭川の−12℃の朝に「これ以上の装備はいらないな」と確信した組み合わせ。
さらに、手袋・ネックウォーマー・耳あて・足用カイロがあると世界が変わる。
寒さって“末端の冷え”から来るから、そこを守れば一気に楽になるよ。
Q4. 転ばない歩き方ってある? 初めての雪道が怖い…
わかる。初めての雪道は誰でも怖いよね。
でも大丈夫。コツさえつかめば歩きやすくなるよ。
僕が地元の人に教えてもらった方法は、「歩幅を小さく、足裏全体で着地する“ペンギン歩き”」。
急がない、ポケットに手を入れない──これだけで転びにくさが全然違う。
冬の北海道は“安心して歩けた瞬間”から一気に景色が広がるよ。
Q5. 冬の北海道旅行に絶対持っていくべきものは? 迷ってるんだけど…
これはもう断言できる。
手袋、マフラー(またはネックウォーマー)、スノーブーツ、カイロ、保湿アイテム、モバイルバッテリー。
この6つは“旅の快適度を底上げする神器”みたいな存在。
特にカイロとモバイルバッテリーは侮れない。
寒さでスマホの電池が一気に減るから、僕は冬旅では必ず2個持ってるよ。
このあたりをしっかり揃えれば、冬の北海道は驚くほど歩きやすくなる。
まとめ|白い息が溶けていく朝に──冬の北海道は、準備した分だけ優しくなる
白い息が、朝の光の中でゆっくりと溶けていく──。
冬の北海道で迎える朝は、いつだって僕の胸の奥をそっと掴んで離さない。
まるで「今日も新しい景色を見せてあげるよ」と、雪の大地が微笑みかけてくれているような感覚だ。
氷点下の空気はキリッと鋭い。まるで旅人の覚悟を試すかのように、頬や指先に冷たさを突きつけてくる。
でも同時に──その冷たさのすぐ隣に、言葉では言い表せないほど凛とした美しさがある。
雪道を歩くたびに「この景色を味わわせてくれてありがとう」と思ってしまうほど、冬の北海道はドラマチックだ。

発熱インナー、あったかいニット、頼もしすぎるダウンジャケット。
そして雪をしっかり噛んでくれるスノーブーツ、手先を温めてくれる手袋。
ひとつひとつの装備は、ただの“持ち物”じゃない。
「旅を自由にしてくれる相棒たち」なんだ。
僕は何度も冬の北海道を歩いてきたけれど、準備が整っている日の旅は、とにかく“軽い”。
寒さに怯えないぶん、心のスペースが広がる。
その余白があるからこそ、景色の美しさが何倍にも胸に染み込んでくるんだと思う。
しっかり準備をしたその瞬間から、冬の北海道は旅人に優しく扉を開く。
朝焼けが雪面に反射して生まれる淡いピンク色、降りしきる雪の中に宿る静寂、
夜景の灯りが雪に反射してぼんやり輝くあの魔法のような瞬間──。
準備が整っていれば、そのひとつひとつを“寒さではなく感動”として受け取れる。
寒さに備えることは、景色を深く味わうこと。
これは僕がずっと冬の北海道を歩きながらたどり着いた、小さな答えだ。
次の冬、あなたが北海道の大地に立つとき、
今日読んでくれたこの“冬旅の手帖”が、そっと背中を押してくれたら嬉しい。
そして、雪明かりに照らされたあの世界を、ぜひあなた自身の目で見てほしい。
冬の北海道は、準備した分だけ、誰にでも驚くほど優しくなる。


