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【年始旅行記】正月の東京を路面電車で|食べ歩きと神社を巡るひとり旅

旅行記
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正月の東京は、少しだけ別の街になる。
いつもは人で溢れている駅前も、商店街のざわめきも、
年が変わった直後だけは、どこか遠慮がちだ。

旅ライターとして、これまで何度も「年始の旅」を取材してきた。
地方の温泉地、海外のリゾート、にぎやかな初詣スポット。
どれも素晴らしい。でも、正直に言えば、年始は“移動そのもの”が疲れることも多い

そんなことを考えながら迎えた、今年の年始休暇。
遠くへ行く気力はなかった。
かといって、家で時間をやり過ごすほど、気持ちは止まっていなかった。

「東京の中で、ちゃんと旅をする方法はないだろうか」
そう考えたとき、自然と思い出したのが、都電荒川線だった。

派手な観光地を結ぶ路線ではない。
むしろ、生活のすぐ横を、静かに走っている路面電車だ。
だからこそ、これまで数えきれないほど取材で歩いてきた今でも、
「ひとりで乗るなら、この路線だ」と迷わず思えた。

今回の旅で決めたルールは、ひとつだけ。
予定を詰めないこと。
食べ歩きができそうな匂いがしたら降りる。
静かな神社を見つけたら、立ち止まる。
それ以外は、電車に任せる。

この記事は、
「正月、どこかへ行きたい気もするけれど、気合はいらない」
そんな読者のための、都電荒川線・ひとり旅の記録だ。

もし今、あなたが次の休日をどう過ごすか迷っているなら、
この路面電車の旅は、きっと参考になると思う。


三ノ輪橋|年始の朝、食べ歩きから始まる

年始の朝、旅は東の終点から始まった。
終点・三ノ輪橋に着いたのは、朝九時前だった。
ホームに降り立つと、吐く息が白く、
年始の東京特有の、少し張りつめた静けさが肌に触れる。

これまで数えきれないほど商店街を歩いてきたけれど、
正月の朝ほど「街の素顔」が見える時間帯はない。
シャッターは半分以上閉まっている。
それなのに、不思議と寂しさはなかった。

惣菜屋の奥から、揚げ油の音と匂いが漂ってくる。
営業している店は多くない。
だからこそ、一軒一軒の存在が、やけに心強い。

揚げたてのコロッケをひとつ。
紙袋越しに伝わる熱を感じた瞬間、
「ああ、今日はちゃんと外に出てよかった」と思った。

旅先で食べるものは、豪華である必要はない。
特にひとり旅なら、
身体と気持ちが、同時に温まるかどうかのほうが大切だ。

全部が開いていない正月の商店街は、
「急がなくていい」「予定を決めなくていい」と、
静かに語りかけてくる。

この日の食べ歩きは、主役ではない。
でも確かに、旅のエンジンをゆっくりとかける役割を果たしてくれた。

ひとり旅メモ|三ノ輪橋
年始の朝は人が少なく、街の写真が撮りやすい時間帯。
最初から満腹を目指さず、コロッケや惣菜で「歩くリズム」を作ると、
その後の途中下車や街歩きが、驚くほど楽になる。

町屋駅前|開いているカフェに、ほっとする

コトコトと電車に揺られ、町屋駅前で途中下車した。
改札を出てすぐ、正月にもかかわらず灯りのついているカフェが目に入る。

この瞬間の安堵は、ひとり旅を重ねた人ほど、よく知っていると思う。
「どこか一軒、開いていてくれればいい」
年始の街では、その願いが思いのほか切実になる。

窓際の席に腰を下ろし、
湯気の立つコーヒーを両手で包む。
ガラス越しに見える通りは静かで、
店内には、僕と同じように一人で時間を過ごす人が数人いた。

これまで国内外を旅してきて感じるのは、
ひとり旅に必要なのは「名所」より「安心して座れる場所」だということだ。
特に正月のように街のリズムが緩む時期は、
こうした休憩地点が、旅全体の質を大きく左右する。

三ノ輪橋での食べ歩きは、身体を外へ連れ出すための合図だった。
そして町屋駅前のこのカフェは、
その流れをいったん受け止め、
次の途中下車へ向かうための「呼吸」を整えてくれる場所だった。


大塚駅前|正月でも動いている街の匂い

電車を降りて、大塚駅前の交差点に立つと、
それまでとは、明らかに空気が変わったのがわかる。
人の数が少し増え、足取りに目的が戻ってくる。

正月だから特別、という雰囲気ではない。
むしろ、正月でも日常が続いているという感覚に近い。
都電荒川線の中でも、大塚は街のエンジンが止まらない場所だ。

軽めのランチをとり、駅前を少し歩くだけで、
「東京はちゃんと生きている」と、身体で理解できた。
観光地を巡らなくても、
人が暮らしている匂いそのものが、立派な旅の要素になる

これまで取材で何度も感じてきたが、
ひとり旅では、こうした“生活が流れている街”を一度挟むと、
気持ちが極端に内向きにならず、旅全体のバランスが整う。

三ノ輪橋の静けさ、町屋の落ち着き、そして大塚の生活感。
都電荒川線は、ほんの数駅で気分のチャンネルを切り替えてくれる
だからこの路線の旅は、疲れにくい。


王子駅前|飛鳥山公園で、何もしない

王子駅前で電車を降り、
人の流れから少し外れるようにして、飛鳥山公園へ向かう。
ゆるやかな坂を上りきると、視界がひらけ、
冬の冷たい風が、頬をやさしく撫でていった。

取材や旅で、これまで数えきれないほど公園を歩いてきた。
その中でも飛鳥山は、
「何かをしなくても許される空気」を、自然に用意してくれる場所だと思う。

ベンチに腰を下ろし、しばらく何もしない。
スマホも見ない。
今年の目標も、無理に考えない。

正月という節目は、
つい「新しいことを始めなければ」と背中を押してくる。
でも、旅を重ねるほどに感じるのは、
本当に必要なのは、始める前に立ち止まる時間なのではないか、ということだ。

この旅で一番強く残っている記憶は、
名所の景色でも、食べたものでもなく、
この「何も起きなかった時間」だった。

都電荒川線のひとり旅に、
こうした空白を挟める場所があること。
それが、この路線を年始に選んでよかったと思えた、
大きな理由のひとつだった。


鬼子母神前|お願いしすぎない、年始の神社巡り

鬼子母神前で電車を降り、
人の流れから少し距離を取りながら、境内へ向かう。
砂利を踏む音、遠くで交わされる小さな話し声、
風に揺れる木々の葉擦れ――どれも、正月らしく控えめだ。

全国各地の神社を取材してきたが、
鬼子母神堂の年始には、独特の落ち着きがある。
初詣の時期でありながら、
「お願いをしに来る場所」というより、「気持ちを預けに来る場所」に近い。

列に並ぶこともなく、静かに手を合わせる。
今年は、願い事を増やさなかった。
代わりに心の中で浮かんだのは、
「ちゃんと暮らせますように」という、短くて曖昧な言葉だった。

旅を重ねるほど、神社での過ごし方は変わっていく。
何かを強く求めるより、
今の自分の立ち位置を確かめる時間のほうが、
結果的に、その年を軽くしてくれることが多い。

神社巡りは、
願いを叶えるための行為ではなく、
気持ちを整え、街へ戻る準備をするための時間なのだと、
この静けさが、あらためて教えてくれた。

ひとり旅メモ|神社編
年始の参拝は、願い事を増やすより「今の自分を確認する」意識がしっくりくる。
境内に入ったら、まず深呼吸をひとつ。
写真は、その空気を身体に入れてからでも遅くない。

早稲田|西の終点で、旅が一日になる

早稲田で電車を降りる。
西の終点という言葉ほど、ここは騒がしくない。
学生街のはずの通りも、正月らしく静まり返り、
足音だけが、やけに遠くまで響いていた。

振り返れば、朝は三ノ輪橋で揚げ物の匂いに足を止め、
町屋でコーヒーを飲み、
大塚で街の生活に触れ、
王子では、何もしない時間を過ごし、
鬼子母神前で、気持ちを整えてきた。

距離にすれば、東京の中を少し移動しただけだ。
それなのに、不思議と「ちゃんと旅をした」という感覚がある。

旅を重ねるほど、
移動距離や有名さが、旅の満足度を決めるわけではないと実感する。
一日をどう使ったか
その手触りのほうが、ずっと大事だ。

早稲田は、そんな一日を静かに受け止めてくれる終点だった。
ここに着いたから旅が終わったのではなく、
ここに着いたことで、この一日が一つの物語になった
そんな気がしてならない。

遠くへ行かなくても、
予定を詰め込まなくても、
一日は、ちゃんと旅になる。

都電荒川線の終点で、
僕はそれを、静かに確信していた。


都電荒川線は、正月のひとり旅にちょうどいい

年始のひとり旅に向いている路線は、意外と少ない。
移動が長すぎると疲れるし、
観光地色が強すぎると、ひとりでは居場所を失いやすい。

その点、都電荒川線は、
正月という少し特別で、少し持て余しがちな時間に、
不思議なほど、しっくりと馴染んでくる。

理由のひとつは、一駅ごとの距離がとても短いことだ。
降りてみて違ったら、また次に乗ればいい。
この気軽さは、予定を決めきれない年始の旅において、
想像以上に大きな安心感になる。

食べ歩きと休憩のリズムを作りやすいのも、この路線の強みだ。
がっつり食べる必要はない。
揚げ物をひとつ、温かい飲み物を一杯。
そうした小さな区切りを、自然に挟めるから、
ひとり旅でも無理なく歩き続けられる。

さらに、沿線の神社や寺は、
観光用に切り取られた存在ではなく、
生活のすぐ隣にある場所として佇んでいる。
だから参拝も、どこか日常の延長に近い。
正月だからといって、肩肘張らずに手を合わせられる。

年始でも、どこか一軒は必ず開いている。
完璧に営業しているわけではないが、
「行き場がなくなる」ことがない。
これは、正月の東京を歩くうえで、かなり重要なポイントだ。

そして何より、
都電荒川線では、ひとりでいることが、まったく浮かない
観光客よりも、地元の人の姿が多く、
電車に乗る理由も、降りる理由も、人それぞれだ。

取材や旅を重ねる中で感じてきたが、
ひとり旅に向いている場所には、共通点がある。
それは、「何者かにならなくていい」ことだ。

都電荒川線は、
写真を撮らなくても、
目的地を決めなくても、
旅をしていなくても、許してくれる。

だからこそ、この路線は、
「予定を決めない旅」を、自然に成立させてくれる。
正月のひとり旅に、ちょうどいい理由は、
きっと、こうした小さな積み重ねにある。


よくある質問|都電荒川線・年始ひとり旅Q&A

旅のかたちは人それぞれだ。
特に正月のひとり旅となると、
「本当に楽しめるのか」「不便じゃないか」
そんな小さな不安が、出発前に頭をよぎることもある。

ここでは、実際に年始の都電荒川線を歩いて感じたこと、
そして旅ライターとして多く寄せられてきた質問をもとに、
よくある疑問に、正直に答えていく

Q1. 正月でも都電荒川線は通常通り運行していますか?

はい。都電荒川線は、年末年始も基本的に通常ダイヤで運行しています。
大晦日から三が日にかけて本数が極端に減ることはなく、
「思い立ったら乗れる」安心感が、この路線の大きな魅力です。

Q2. 正月でも食べ歩きやランチはできますか?

できます。ただし、「すべて開いている」とは考えないのがコツです。
三ノ輪橋や町屋、大塚周辺では、惣菜店やカフェ、
一部の飲食店が年始も営業しています。
選択肢が少ない分、
「開いている一軒に素直に入る」旅のほうが、結果的に満足度は高くなります。

Q3. 年始の神社巡りは混雑しませんか?

有名な初詣スポットと比べると、
都電荒川線沿線の神社は比較的静かです。
鬼子母神堂なども、時間帯を選べば列に並ばず参拝できます。
「願いを叶えてもらう」というより、
気持ちを整えに行く感覚で訪れるのがおすすめです。

Q4. ひとり旅でも浮きませんか?

まったく浮きません。
都電荒川線は観光地というより生活路線なので、
ひとりで乗っている人、ひとりで歩いている人がとても多いです。
むしろ、ひとりのほうが、この路線の空気に自然と溶け込みやすいと感じます。

Q5. どの時間帯から乗るのがおすすめですか?

年始のひとり旅なら、朝9時前後がおすすめです。
街が静かで、写真も撮りやすく、
食べ歩きやカフェ休憩の流れも作りやすい時間帯です。
夕方まで無理に乗り続ける必要はなく、
「一日を半分使う」くらいの感覚が、ちょうどいいと思います。

Q6. 一日乗車券は使ったほうがいいですか?

途中下車を2回以上するなら、一日乗車券(400円)がおすすめです。
料金を気にせず降りられることで、
旅のテンポが一気に軽くなります。
特に年始のように予定を決めない旅では、
ほぼ必須と言っていい存在です。

Q7. 雨の日や寒い日でも楽しめますか?

はい、問題なく楽しめます。
電車移動が中心で、カフェや屋内で休憩できる場所も多いため、
むしろ寒い日や小雨の日のほうが雰囲気が出ることもあります。
無理をせず、「今日はここまで」と決められるのも、
都電荒川線ひとり旅の良さです。

まとめ|正月に、こんな東京の旅があってもいい

正月は、遠くへ行かなければならないものではない。
毎年のように旅をしていると、いつしか
「せっかくの休みだから」「年始くらい特別な場所へ」
そんな言葉に、自分自身が縛られていたことに気づく。

でも今回、都電荒川線に揺られながら過ごした一日は、
その思い込みを、静かにほどいてくれた。

三ノ輪橋で揚げ物の匂いに足を止め、
町屋でコーヒーを飲み、
大塚で街の生活に触れ、
王子では何もしない時間を過ごし、
鬼子母神前で気持ちを整え、
早稲田で一日を受け取る。

やっていることは、とてもシンプルだ。
食べ歩きと、神社巡り。
それだけなのに、心の中には、
「ちゃんと休んだ」「ちゃんと外に出た」という実感が残った。

旅を重ねるほど、強く感じることがある。
それは、旅の満足度は、移動距離や話題性では決まらないということだ。
一日をどう使ったか、
どんなリズムで歩いたか、
その手触りこそが、記憶になる。

都電荒川線は、
その「一日の使い方」を、こちらに委ねてくれる路線だった。
急かされることもなく、
何かを消費することもなく、
ただ、降りたい駅で降りればいい。

もし年始、
どこへ行くか決められずに、
予定表だけが白いままなら、
三ノ輪橋から、この路面電車に乗ってみてほしい。

きっと、特別な出来事は起きない。
でも、静かに一日を使い切ったという感覚だけは、
確実に手元に残るはずだ。

正月に、こんな東京の旅があってもいい。
そう思えたこと自体が、
この旅で得た、いちばんの収穫だった。

※営業時間・定休日・臨時休業・参拝ルール等は変更される場合があります。最新情報は公式発表や現地掲示をご確認ください。
※年始は特に、営業状況や混雑が日によって変わります。時間に余裕を持って行動するのがおすすめです。


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